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唯一無二のインターネット

電波ソングについてちょっと考えた

adventar.org

序章

かつてここには音楽が存在した。

音魂は初めは小さくて、限りなく小さくて誰もそれに触れることはできなかった。

孤独な日々だったけど、大きな子供や夢見る少女の強い願いはきっと音魂にも届いていたはずだ。

誰かに見つけられる日を信じて彷徨う音魂。

その荒々しくも不思議な丸みを帯びた音は世界中を漂い続け、いつしか人との間にも交流が起こるようになってきた。

段々と音魂たちは集いまた分かれてを繰り返しながら、その姿を刻々と変化させていった。

大勢の人に出会いたくさんのものを背負って、すっかりヒトの子くらいの大きさになった音魂たちは旅立った。

音魂たちはどこへ向かったのか。

人々の目に触れないところでひっそりと息づいているのか、はたまたすぐ傍に脈打つ力強い鼓動に気付いていないだけか。

我々は失われてしまったその音楽を電波ソングと呼び、散り散りになった欠片たちを拾い集めている。

ところで

みなさん、電波ソングをご存知ですか?

ニコニコ動画とかでメドレー聴いたことあるよ〜っていうライトなオタクさんは大体お友達です。フレコ交換しましょう(ないけど)。

2ちゃんねる(今は5ch)とかでフラッシュ文化とともに電波を理解していったさいたまに過剰反応してしまうコアなナードさんは大先輩ですね。 ぜひお話聞かせてください。

この記事は普段 Wikipediaニコニコ大百科電波ソングの定義に感じている違和感やこれでいいのかという疑問を動機に、電波ソングのいくつかの特徴をジャンル別に書き出したものです。

電波ソングはインターネットの遺産のように扱われることも少なくないですが、この記事を読んで身近にある生きた電波ソングの鼓動を感じてもらいたいという思いを込めています。

対象読者には普段電波ソングを聴かない人を設定していますが、我こそは電波マスターだという方もぜひ各所ツッコミを入れながら温かい目で読んでください。

あと萌えソングと電波ソングの境界が曖昧になってしまっているのはお許しください。 こればかりは批判記事が出るのを待っております。難しい……

視点別電波ソングの特徴

俯瞰してもらうためにここに目次を置いておきます。

  • 曲調
    • テンポの目まぐるしい変化
    • 一般的なJ-POPには見られない特徴的なイントロ
    • 馴染みあるメロディのオマージュ
  • 歌詞
    • 頭から離れなくなるフレーズの繰り返し
    • はばかられる歌詞
    • 一般的な専門用語が多い歌詞
    • 作品固有の専門用語が多い歌詞
  • 歌い方
    • 歌い手さんがもう電波
    • 効果的なエフェクトの多用
    • 掛け声、合いの手
    • めっちゃ早口

曲調

テンポの目まぐるしい変化

干物妹!うまるちゃんのOPでこの手法が使われたこともあって、最近アニソンを聴き始めた人にも馴染み深い特徴でしょうか。 BPMに合わせて心拍数200で音楽を聴いている時に突然120とかになるのはヒヤリハット事案です。

同時期に放送されていたガヴリールドロップアウトのOPでは突然三拍子になるという驚きの展開が心臓を3つに割いてくれましたが、問題の箇所は2番なのでフルバージョンを聴いたことがない方にはぜひ体験して欲しいです。

そういえばひと昔前にももクロの"ミライボウル"(ドラゴンクライシス!ED)を聴いた時にはサビに入った瞬間曲が変わったのかな?と何度も確認したものですが、この手法が使われる曲は近年少しずつ増えてきているような気がします。 表現方法が増えたり、マイナーなものがメジャーになっていく瞬間は面白いですよね。

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一般的なJ-POPには見られない特徴的なイントロ

あまり時代に左右されない特別な性質の一つです。 イントロから明確に電波をゆんゆん感じられる 僕は友達が少ない のOPはとても強烈で、歌詞(というか語り)を織り交ぜることで電波感を作り出しているあの"巫女みこナース・愛のテーマ"にさえ肩を並べるくらい好きなイントロです。 曲のタイトルが"残念系隣人部(星二つ半)"なのも作品固有の単語で電波感を引き立たせていて素敵です。

また難解なフレーズや独特の世界観、珍しい楽器やおっさんの人柄からついにフォロワーが10万人にのぼったアーティスト平沢進さんの音楽にもこの性質がよく(ほとんど?)含まれています。 P-MODELの"美術館で会った人だろ"なんかはもうイントロからゆんゆんきますよね。 平沢進さんは今敏監督制作のアニメ映画で数々の名曲・迷曲を生み出していることでも有名ですが、最近発売されたRUINERというサイバーパンクACTゲームにも楽曲提供を行っているようでまだまだ現役活躍中のアーティストとして注目していきましょう。 唯ちゃんではないですよ。

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馴染みあるメロディのオマージュ

クラシックアレンジでも特にカノンコードを利用した音楽は世界中にごまんとありますが、イヤホンズの"ヨロコビノウタ"(神獄塔メアリスケルターED)に至ってはバロック音楽からロマン派音楽までなんと8曲ものクラシック音楽が融合されています。 雰囲気の全く異なる音楽が決して厚化粧にならないアレンジで丁寧にまとめられていて、何度も聴いても疲れない安心感がありますね……もしかして電波ではない? 作曲者のエンドウさんは他にもかわいさ、かっこよさなどの魅力にパラメータをガン振りした曲をたくさん作っていますので今後の活動もとても楽しみです。

同じくカノンコードが利用されている曲で特に馴染み深いであろう曲に"カレ・カノ・カノン"があります。 太鼓の達人に収録されていることから知名度も高く、少し高めのBPMから心地よい電波を感じます。

とびきりきわどいものだと、ラッパのマークのあのCMそっくりなメロディが使われている電波ソングが存在します。 パチスロ快盗天使ツインエンジェル内のボーナストラック"エンドレスヘブン"はタイトルから察しがつくようにわりとNSFW(職場閲覧注意)な曲です。 山本椛さんに嬲られる覚悟のある人だけ聞いてください。 安心してください、IOSYSですよ!

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歌詞

頭から離れなくなるフレーズの繰り返し

こちらで「ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆり」と歌えばあちらで「ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆり」と歌われ、輪唱はやがて世界中に広がっていくことは広く知られていますが、同じようにイントロで繰り返しフレーズを多用するものにうまるちゃんのOPがあります。

「U・M・R!(はい!) U・M・R!(はい!) UMAぢゃないよ う・ま・る!」なんて歌詞一体何体のUMAに遭遇すれば思いつくんでしょうか。 田中あいみさんの演技力も相まって作品のイメージをうまく表現している素晴らしい歌詞です。 「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」のように強烈なコピペを残した"太陽曰く燃えよカオス"のような楽曲もありますが、最近は特徴的なフレーズを持った楽曲は少なくなっているように感じて少し寂しいですね。

なお、この性質を持った曲は電波ソング率がガッと上がります。 もちろん「巫女みこナース巫女みこナース!」や「ふぃぎゅあっと」も含まれます。 これらは後に紹介する専門用語を多用する楽曲とほとんど被っていて、繰り返しのフレーズが使われる曲は専門用語(一般・作品固有問わず)が多めです。

それ以外の普遍的な用語を繰り返す曲では"魔理沙は大変なものを盗んでいきました"にはイントロで数字の123を各国の言葉で繰り返し歌うところがあります。 全く意味のない言葉を繰り返す曲となるとまた東方から"最終鬼畜全部声"の「れっでっでっでれぇれれっでっでっれっでっでっでれぇれれっでぇぃ」があります。 ただこれに関してはビートまりおさんの口譜面みたいなものなので歌詞に含めて良いものかちょっと怪しいです。

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はばかられる歌詞

はばかられる具合には個人差がありますので、ここでは最大級のはばかられを得られる曲としてNSFW(職場閲覧注意)な曲を紹介したいと思います。 後ろを振り向いてください。誰もいませんね。 人前で歌うこと、口ずさむこと、全部はばかってください。

あなたは知っていますか、かつてYouTubeで「音楽」と検索するとこの曲が1番上に表示されていた時代があったことを。 "ちっ◯いぱん"という同人音楽、なんと歌詞の95%が下ネタらしいです(ニコニコ大百科より)。 歌い手の小宮真央さんは"路上のギリジン"などのBMSの名曲を歌われているような偉大な方なのに、どうしてこんなことを……(歓喜)。

そして、これまでたくさんの電波ソングを生み出しその不健全さを誇り続けてきたIOSYSからも、さすがに前曲を超えるものは出ていなかった(おそらく)のですが、それから8年が経過し2014年、ついに約100%下ネタ曲が出てしまいました。 タイトルをそのまま表記するのははばかられるので、周りをよくご確認の上「マイスター学園 主題歌」で検索してください。 安定の void/夕野ヨシミ ですね、愛してる。

music-book.jpミックスしかなかったのですが、原曲も聴いてください。 music-book.jp

一般的な専門用語が多い歌詞

コンピュータ用語といえば MOSAIC.WAV の右に出るものはいませんね。 MOSAIC.WAV は濃い歌詞の曲はとことん濃いので一般人は置いてけぼりを食らいます。 "電気の恋人"なんてBASICのプログラムで使われるような単語が歌詞に含まれています。 昔の人は8bitで月まで飛んだんですよ……。

最近だとMOSAIC.WAVのコンピュータ曲は減ってきましたが、同じく同人のななひらさんがメーラーデーモンの曲や数学の曲を歌って濃い目なオタクに支持を受けています。 "メモリー100テラつもうよ!"なんかは曲調こそ違えど、全盛期のMOSAIC.WAVを思い出させてくれる曲です。   歌詞に大工用語を含んだ"カンカン・マキマキ"という極めてレア度の高い(入手は容易!)曲があります。 これはたまこまーけっとに登場する主人公の友人牧野かんなの大工魂が溢れる楽曲となっており、キャラソンとはかくあるべきという姿を表しています。

music-book.jp music-book.jp これは一般か作品固有か怪しいですね。

作品固有の専門用語が多い歌詞

大衆に共感を誘う曲が基本のJ-POPとは逆をいくのも電波ソングの特徴の一つです。 MOSAIC.WAV はこれも得意とする分野で、数多くの作品に世界観を丁寧に象った楽曲を提供しています。 その中でも代表的な"最強○×計画"(すもももももも〜地上最強のヨメ〜OP)と"超妻賢母宣言"(狂乱家族日記OP)は、電波ソングというとこれらを想像する人が多いのではないでしょうか。 もはや作品が楽曲なしで語れないレベルにまで昇華させる柏森さんの作曲能力とみ〜こさんの歌唱力は本当に素晴らしく、原作を知らない人も楽曲からアニメ自体は知っている人も多いはずです。 最近でもりゅうおうのおしごと!などの作品に楽曲提供を行っているようですが、全盛期よりはめっきり減ってしまったように感じて寂しいです。

また大衆の共感を誘う気がないといえば、極めて特殊な愛情を歌った"撲殺天使ドクロちゃん"(同名作品OP)が有名でしょう。 愛情表現が過激すぎて主人公の桜くんをついやってしまうドクロちゃんの日常が歌詞に描かれています。 作中の武器「エスカリボルグ」や謎の擬音「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪」を歌詞に織り込んでしまうあたり作詞した水島監督と作曲の高木さんたちの悪ふざけを感じますね。

music-book.jp music-book.jp 電波……?

歌い方

歌い手さんがもう電波

有名な同人音楽の歌い手であるななひらさんはその声一つで楽曲を電波方面に引っ張ってくれます。 初めて"物凄い勢いでけーねが物凄いうた"を聴いた時の衝撃は忘れられません。 しかも Halozy×ななひら の物凄いシリーズとしてシリーズ化してます(ビックリ)。

ななひらさんはラブリコットという小紺ココさんとのユニットや、さらに桃箱さんを交えたSHAKING PINKというユニットで素晴らしい歌声を電波に載せて世界中に届けてくれています。 ラブリコットはどの曲も電波がたっぷり入っていて素敵なのですが、やはりアルバムを買って通して聴くことをオススメします。 "Primary*Step"を1枚買うとその魅力に取り憑かれて最高にハッピーになれます。最高です。

他にもIOSYSで東方アレンジな電波ソングを歌っているmikoさんは電波な歌もかっこいい歌も歌える二面性を持っています。 しかも彼女は代表作に今年で9周年を迎えた"チルノのパーフェクトさんすう教室"を持つ古参電波シンガーです。

桃箱さんとのユニット miko箱 を結成しており、お二人の仲良しな様子をツイッターなどで確認することができます。

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効果的なエフェクトの多用

歌い手さんや声優さん個人の力が試されるだけではなく、どこでどんなエフェクトをかけるか調整して声を映えさせるエンジニア力も求められます。 10年くらい前にリミックス音楽の流行があったのか、狂乱家族日記EDの一つ"狂乱戦記~日常ノ神サマ~"では歌の合間にremixされた藤村歩さんの声が流れる演出がありました。 なお同アニメのキャラクターソングCD(EDがキャラソンになっている)にはそれぞれのED曲のリミックスが収録されています。

最近でもYouTubeで見ることのできるbanvoxさんのリポビタンDのCMでは録音した三浦さんの声をmixして曲を作っているシーンがあり、最近の作曲シーンの移り変わりを感じます。

また声の改変ネタではとても面白い試みがあります。 堀江由衣さんの声を初音ミクなどのヴォーカロイドのような声に変換したミスモノクロームというキャラクターがいます。 ミスモノクロームを歌わせたり喋らせたりするプロジェクトは、アニメは3期まで放送されCDも10枚以上売り出されているのです。 ガールフレンド(仮)にも出演しているようです。 手の届かない高みに機械と人とが手を取り合ってのぼっていくような感覚を覚えて、なんだかワクワクしてきますね。

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掛け声、合いの手

「(゚∀゚)ノキュンキュン!」や「ヽ(゚∀゚)ハイハイ!」っていうアレです。 ステレオタイプな電波ソングのイメージではありますが実はそんなに多くない気がします。 KOTOKOさんの"きゅるるんKissでジャンボ♪♪"などで使われていた手法です。 流行のきっかけはあべにゅうぷろじぇくとの"ラブリー えんじぇる!!"でしょうか。 この曲が使われている怪盗天使ツインエンジェルは電波ソングの宝庫たる萌えスロ界(萌えパチスロ業界)の先駆けとも言える存在です。

そんなあべにゅうさんの曲には、歌の合間のみならずサビではなんと2小節ごとに合いの手が入る"生意気☆いちごミルクDAYO!!"という楽曲も存在します。 この曲は、バックの音楽が240BPMで進行するのに対して、歌い手の草柳順子さんが120BPMで楽曲タイトルを連呼し続けるという前衛的なスタイルで、一度聴き始めるとBGMとして無限ループしてしまいます。 テンポがで進むうまくつなげるとループしていることに気付かないまま何周もしてしまうこと間違いありません。 ジャンル名はなんというのでしょうか。コメントで教えていただけると嬉しいです。

music-book.jp これもリミックスしかなかったのですが、原曲も聴いてください。 music-book.jp

めっちゃ早口

でんぱ組.inc には早口な曲が多いです(そもそもアイドルソングなのにBPMが200近いって何?)。 2017年には自ずから電波を名乗る曲がかなり少なくなっているのでとても頼もしい存在です。 後これ"でんでんぱっしょん"を聴きながら書いていて、今さらCメロがカノンなことに気付きました。

早口曲といえば外せないアイツがいます。 歌詞もぶっ飛んでいるがそれを歌いこなす声優さんの実力が恐ろしい。 やかま進藤、おとな進藤、なんのその。入手困難レアディスク。 "夏はマシンガン"と"冬もマシンガン"を無視して早口音楽を語ることはできません。 この楽曲はPCゲームみずいろのキャラクターソングとしてコミケ限定で販売されたものです。 ゲームをプレイして強烈な個性を愛し、有明に向かったツワモノだけが手に入れた楽曲からはとてつもないオーラを感じます。

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おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。 実に2万文字弱ありました。

もしかしたら未来の電子ドラッグって電波ソングがベースかもしれません。 そんなことを時々真剣に考えます。

今後は秋葉原を歌ったA-POPなどについてもまとめていきたいと思っています。

さて、この記事は WORDIAN Advent Calendar 2017 10日目 の記事です。

なんと今日まで毎日記事が更新されています。 すごい。 @hid_alma1026 先輩っぉぃ。でも後輩がいないのは悲しいですね。

WORDは本物のナードを募集しています。

明日はOBのいおりんが書いてくれるそうです。楽しみですね。